ロボットの骨格を構成する金属部品は、長時間の連続稼働によって摩耗が進行し、内部に封入されたグリースが劣化すると粘性が低下します。その結果、金属同士が直接擦れ合い、過度の摩擦熱とともに「キュルキュル」「ギシギシ」といった異音が生じることがあります。
減速機内部に配置されたギアやベアリングは、設計精度や加工精度、使用環境に大きく依存します。かみ合わせのバックラッシュやベアリングの転動面の摩耗が進行すると、作動時に「カタカタ」「シャリシャリ」といった高周波に近い異音を発生します。
特に冷間環境や湿度変化が激しい場所ではグリースの流動性が低下し、音が増幅されることがあります。
ロボット本体のボルト・ナットは、振動や繰り返し運動によって徐々に緩むことがあります。また、シール部やケーブル固定具の隙間にホコリやゴミ、髪の毛などの異物が入り込むと、摺動面同士が不規則に接触し「ガサガサ」「カチカチ」といった異音を放ちます。家庭用掃除ロボットではエッジクリーニングブラシ周辺に絡んだ髪の毛やホコリが原因で異音が生じることもあるため、ブラシキャップを外して内部の異物を徹底的に除去することが重要です。
サーボモーターに過電流が流れると、内部コアに過度の負荷がかかり、断続的な電流供給不良が振動として伝わり異音を伴う場合があります。また、制御ケーブルやコネクタの断線、接触不良があると通信エラーが発生し、信号の再送やモーターの振動が引き金となって「ブブブ」「ジー」といった音が現れることがあります。これらは電圧測定やケーブルテスターによる導通試験で検証し、異常箇所を特定します。
家庭用掃除ロボットなどでは、ブラシ部品やフィルターが摩耗・目詰まりを起こすと、回転軸付近で「ギィギィ」「ガガガ」という音が発生します。ブラシキャップを外して髪の毛やホコリを取り除き、ブラシを取り外した状態で本体を稼働させたときに異音が消えるかを確認することで、本体側機構の異常と消耗品劣化による異音を切り分けられます。
異音を検知したら最優先で非常停止ボタンを押し、制御系の電源を瞬時に遮断します。ISO10218-1:2025では非常停止はカテゴリ0またはカテゴリ1の停止機能を使用して瞬時に動力を遮断し、停止後は無励磁ブレーキによって姿勢を保持することが規定されています。停止後は機器外観を視認し、漏れや破損、シリンダー内部リークの有無などを確認して二次トラブルを防ぎます。
原因部位を絞り込むためには、振動計やスマートフォン向け音響測定アプリで異音を数値化し、正常時と比較して異常度合いを記録します。製造現場では振動センサーや音響センサーを用いた状態監視システムを導入し、リアルタイムに異常兆候を検出する取り組みが広がっています。これにより、異音発生箇所を迅速に特定し、安全に原因調査を進めることが可能になります。
ロボットコントローラやティーチングボックスには、異音発生時のエラーコードが保存されます。表示された番号を公式マニュアルやオンラインのエラー一覧と照合し、原因箇所を特定します。川崎ロボットでは、コードをエラー検索システムで確認し、該当する対処法を実施することが推奨されています。ログとともにエラーコードをサポート窓口へ提示すると、迅速なトラブルシューティングにつながります。
家庭用掃除ロボットでは、回転ブラシ周辺に絡んだ髪の毛やホコリがブラシキャップ内で摩擦音を立てることが多く、走行中に「ギシギシ」「カリカリ」といった異音が発生します。ブラシを取り外して異物を除去したうえで再度稼働させ、異音の有無を確認することで、消耗品劣化による音と本体機構の異常を区別することが可能です。
産業用ロボットでは、減速機内のギア摩耗やベアリング劣化が進行すると「ガタガタ」「カシュッ」といった高周波の異音を発生し、ライン停止を招きます。特に高温多湿環境ではグリースの流動性が低下して摩擦音が増幅されるため、定期的なグリース交換と振動測定による状態監視が効果的な対策となります。
配膳ロボットや介護支援ロボットでは、キャスター軸の緩みによるガタつきや、センサー周辺の埃付着による誤作動時に「カチカチ」「ピッピッ」といった連続音が生じることがあります。定期的にキャスター部の増し締めを行い、センサー表面の清掃を徹底することで、サービス現場での異音トラブルを未然に防げます。
日常点検では、各軸の油脂類の漏れや滲みの有無を目視で確認し、動作時の異音やガタつきをチェックします。また、グリースサンプルを採取して鉄粉濃度を測定し、摩耗の進行度を数値化して記録することで、部品限界到達前の計画的交換が可能になります。
ロボットのグリース交換は三千〜五千稼働時間を目安に実施し、特に夏期の高温環境や重荷重運転が多い工程では早めの交換が推奨されます。ブラシやフィルターなどの消耗品は、規定交換周期を遵守し、摩耗や目詰まりが見られた際には速やかに部品を交換して異音発生リスクを抑制します。
予防保全に活用できるツールとしては、適正締付管理のためのトルクレンチ、振動計や音響センサーによる挙動モニタリング、グリース評価用のポータブル鉄粉濃度計『SDM-72』、および異常発熱検知に有用な赤外線温度計などが挙げられます。これらを組み合わせた点検体制により、異音の早期発見と対策が効率化されます。
まずは公式FAQやエラーコード検索システムで原因を確認し、自己対応可能な範囲を特定します。その後、製造番号やシリアル番号、エラーコードと内容をサポート窓口に伝え、通信ログや動画があれば添付すると、やり取りが円滑になります。
年間保守契約を結ぶことで、オンコール優先対応、24時間受付、定期点検時のバッテリー無償交換、障害復旧時の迅速な技術者派遣など、さまざまなサービスを利用できます。保守費用を予算化し計画的に活用することで、突発的な故障による稼働停止リスクを大幅に低減できます。
なお、当サイトではサービスロボットの用途別におすすめの保守会社を紹介しています。ぜひ併せて保守会社選びの参考にしてください。



※2024年8月8日にGoogle検索で「ロボット保守」と検索した際に表示されるサービスロボット保守会社の中で、唯一。BIB Robotics Japan社のスマート清掃ロボット「J40」及びIDRIVERPLUS社の無人運転清掃ロボット「VIGGO」の認定運用パートナーとして保守サービスを提供。
※2:参照元:DFA Robotics公式HP(https://dfarobotics.com/topics/xsp--g9xq/)、2021年11月~2024年9月時点