製造現場において産業用ロボットは欠かせない存在となっています。その性能を最大限に引き出し、安全に長期運用するためには、適切な点検が必要不可欠です。本記事では、産業用ロボットの点検がなぜ重要なのか、そして具体的にどのような点検を行うべきかを解説します。
産業用ロボットは高速かつパワフルな動作が可能な反面、適切な管理を怠ると重大事故につながる危険性があります。点検を怠ることで、モーターブレーキの摩耗によるアームの落下や、ケーブル断線による誤作動などが発生する可能性があるのです。
定期的な点検により、部品の劣化や異常を早期発見し、修理・交換を行うことは労働安全衛生法でも義務付けられています。作業員が安心して働ける環境を維持するためにも、点検は極めて重要な役割を果たします。
生産ラインにおいて、一台のロボットが停止すればライン全体、ひいては工場全体の生産活動に影響が及びます。突発的な故障によるダウンタイムは、納期遅延や機会損失といった形で企業に大きな損害をもたらすでしょう。
定期点検は「予防保全」の考え方に基づき、不具合の兆候を早期に捉えて対処します。これによりロボットは常にベストコンディションを保ち、安定した稼働を続けることができます。結果として生産計画の乱れを防ぎ、製品品質の維持にもつながるのです。さらに、点検を通じた動作最適化により、タクトタイム短縮などの生産性向上も期待できます。
産業用ロボットは高額な設備投資であり、できる限り長期間にわたって性能を維持しながら使用したいものです。人間の健康診断や車の車検と同様に、定期点検はロボットの寿命を延ばすために不可欠な活動です。
適切なタイミングでのグリスアップや消耗部品の交換は、モーターや減速機といった主要部品への負荷を軽減し、致命的な故障を防ぎます。点検には費用がかかりますが、突発的な故障が発生した場合の修理費用は定期点検費用をはるかに上回ります。加えて生産停止による損失も発生するため、長期的視点では定期点検は大規模修理費用やロボット買い替えコストを抑制する賢明な投資といえるでしょう。
産業用ロボットの点検は、内容や専門性のレベルによって以下の3つに分類されます。
日常点検は、毎日の始業前や稼働中に作業員自身が行う最も基本的な点検です。特別な工具は不要で、五感を使ったチェックが中心となります。
チェックすべき項目として、下記のようなものがあります。
これらを毎日確認することで、異常の早期発見につながり、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
定期点検は、半年から1年に一度、あるいはメーカー推奨の稼働時間ごとに、専門技術者が行う計画的な点検です。ロボットの性能維持と寿命延長に不可欠な作業といえます。
主な点検内容には、各軸減速機へのグリスアップ・オイル交換、プログラムや原点情報を記憶するコントローラーバッテリーの交換、可動部ケーブルの断線兆候確認、モーターブレーキの機能テスト、タイミングベルトの張力確認と調整、ティーチングデータと実際の動作のズレ確認と補正、そしてプログラムや設定データのバックアップなどが含まれます。
オーバーホールは、長期間使用したロボットに対して行う大規模な点検です。メーカー推奨の数万時間といった稼働時間を目安に実施され、ロボットを分解・洗浄し、経年劣化した主要部品を交換することで新品に近い性能まで回復させます。
高度な専門技術が要求されるため、基本的にはロボットメーカーや専門業者に依頼します。モーターや減速機、ハーネス類といった基幹部品を一式交換することで、その後も長期間の安定稼働が期待できるようになります。
点検を自社で行うか専門業者に委託するかは、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて判断する必要があります。
自社対応のメリットは、社内にノウハウが蓄積され対応力が向上すること、軽微な不具合への迅速対応が可能なことです。一方で、幅広い専門知識が必要となり人材育成にコストと時間がかかること、予備部品の在庫管理負担が発生することがデメリットとなります。
専門業者への委託では、経験豊富な技術者による高品質な点検、緊急時の迅速対応、専門人材の雇用・育成コストや特殊工具費用を考慮した場合のコスト効率の良さ、従業員を本来業務に集中させられることがメリットです。デメリットとしては、業者到着までのタイムラグや、社内へのノウハウ蓄積が進みにくい点が挙げられます。
業者選定の際は、自社のロボットメーカーや業界での実績、複数メーカーへの対応範囲、技術者のスキルレベル、24時間365日対応などのサポート体制、そして予防保全や改善提案力などを確認することが重要です。
産業用ロボットの点検は、安全性確保、生産性維持、コスト削減という3つの重要な役割を担っています。日常点検は作業員が行い、専門的な定期点検は外部業者に委託するなど、役割分担を明確にすることが効果的です。自社の状況に応じて最適な点検体制を構築し、信頼できるパートナーを見つけることで、ロボットは長期にわたって頼もしい戦力として活躍し続けてくれるでしょう。
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※2:参照元:DFA Robotics公式HP(https://dfarobotics.com/topics/xsp--g9xq/)、2021年11月~2024年9月時点